低温調理は美味しいです。
特に鶏胸肉など火が入りすぎるとパサパサしてしまう食材には低温調理で優しくゆっくりと加熱する事で、水分を保ったまましっとりとした美味しい鶏胸肉に仕上がります。
しかし、低温調理は正しい知識を持って調理をしないと食中毒の危険性を帯びています。
これは家庭で作ろうと、飲食店で作ろうと同じ事です。
美味しく調理できようと、食中毒になってしまっては本末転倒です。
本記事では鶏胸肉を55度で加熱では足りない理由と改善方法について解説します。
鶏胸肉を低温調理するのに55度では温度が低いです
鶏胸肉を低温調理するのに55度では温度が低いです。
なぜ鶏胸肉が55度で調理する事が美味しく作れるという事になっているのか?
あくまで推測ですが、某家庭用低温調理器の取扱説明書にそう書いてあるのでしょう。
料理人であれば、鶏胸肉をそんな低温で調理する事はありません。
鶏胸肉はもも肉でも胸肉でもササミであろうと、60度以上で調理します。
もしも、それ以下の温度で調理してるようでれば、かなり危険なお店です。
鶏胸肉の危険性
鶏胸肉の危険性について解説します。
鶏肉を生で食べてはいけないというのは、多くの方がわかっていると思います。
なぜなら鶏肉には次に上げるような菌が存在しているからです。
鶏肉に含まれる菌
- カンピロバクター菌
- サルモネラ菌
なんとなく聞いた事があるという人もいると思います。
以上の菌に当たると、下痢や嘔吐、発熱と言った症状が発症します。
加熱する事でこれらを殺菌する事ができるので、鶏肉は生で食べてはいけないのです。
鶏胸肉を加熱する正しい温度
鶏胸肉を加熱する正しい温度は何度でしょうか?
何度で加熱すればパサつかずに美味しく安全に食べられるのでしょうか?
答えは65度です。
なぜ、65度なのか?
もちろん理由があります。
厚生労働省が発表している特定加熱食肉製品の項目にこう書かれています。
中心部の温度が63°で30分間加熱する方法またはこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。
ただし、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。
(参照:食肉製品の成分規格)
つまり、63°で30分間の加熱をしなければいけませんよ。という事です。
中心温度を含め63°で30分間の加熱が必要だという事です。
65°のお湯に入れて30分間という意味では無いです。
鶏胸肉の大きさによって加熱の時間が変わって来ます。
65°で加熱する場合は、真空パックにして最低でも30分以上はかかります。
鶏胸肉の大きさによっては1時間かかることもありますし、2時間かかることも。
なぜなら中心温度が63°まで達する必要があるからです。
お肉の加熱温度はこちら
中心温度が63°になってから30分の加熱が必要です。
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鶏胸肉の加熱時間を短縮する方法
鶏胸肉の加熱時間を短縮する方法についてご紹介します。
先ほどのところで、鶏胸肉を加熱するのに大きさによっては2時間以上もかかると書きました。
飲食店でも無い限り、鶏胸肉の調理にそんなに時間はかけられないです。
では、どうすれば、調理時間を短縮する事ができるのか?
注目すべきは先ほどの厚生労働省が発表している特定加熱食肉製品の項目です。
中心部の温度が63°で30分間加熱する方法またはこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。
ただし、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。
赤字にした部分に注目してください。
「同等以上の効力を有する方法」で加熱してあれば大丈夫だという事です。
63°で30分以上の加熱と同等の効力とは他の温度だとどれくらなのでしょうか?
例えば、95°なら1秒が63°で30分と同じ殺菌効果があるとされています。
しかし、鶏胸肉の中心温度が95°ではパサパサの極みです。
鶏胸肉のしっとりさを保つのであれば、せいぜい70°までです。
63°30分と同等程度の加熱
- 中心温度が65°であれば、18分程度。
- 中心温度が70°であれば、6分程度。
63°で30分以上の加熱と同等の効力の計算方法はかなり複雑です。
細かく解説している専門的なブログがあるので知りたい方は下記の記事をご覧ください。
鶏胸肉は牛肉ではありません
鶏胸肉は牛肉ではありません。
2020年3月現在「鶏胸肉 低温調理 55度」で検索して上位表示される記事にはかなり微妙な記事が表示されています。
鶏胸肉を55度で低温調理したら美味しかった。55度で調理するのおすすめです。牛肉と同じように美味しくできます。
以上のような記事がありました。
完全に嘘です。
そもそも牛肉と比較している事が間違っていますし、55度で加熱した写真もあり得ないほど火が入っています。
料理人の方ならすぐに嘘だとわかるレベルの加熱っぷりです。
一般的な調理知識を持っていたら、鶏胸肉の加熱温度のおすすめは55度にはなりません。
最低でも60°以上です。
多くの料理人は65〜80°の温度帯で低温調理します。
15年以上飲食業界にいて、鶏胸肉を55°で調理している人には出会った事がありません。
つまり、それほど常識的に危険だと言える事です。
何度で加熱すれば低温調理?
何度なら低温調理なのか?
低温調理に明確な基準は無いです。
強いていうなら99°以下です。
ステーキを焼く場合は、鉄板で表面を焼き固めオーブンに入れて中心部まで加熱する場合、オーブンの温度は180〜200°です。
これを一般的な加熱調理とした場合の低温調理という言葉ですので、99°以下であればおよそ半分の温度なので低温調理と言えるでしょう。
必ずしも55°や65°だけが低温調というわけではありません。
80°や90°でも低温調理の中に入るといって良いでしょう。
鶏胸肉を低温調理するには55度は間違いですのまとめ
鶏胸肉を低温調理するには55度は間違いです。
検索して上位表示される記事があまりにも酷かったので、この記事を書きました。
個人で楽しむ分には良いかもしれませんが、その記事を鵜呑みにして55°で鶏胸肉を調理して食べてしまっては食中毒の危険性が高まります。
誤解がないように言っておきますが、僕は低温調理が悪いと言っているわけではありません。
正しく無い知識で低温調理をするのが危険だという事です。
どちらかといえば、低温調理を推奨派です。
大事な事なので最後にもう一度おさらいしておきましょう。
63°30分と同等程度の加熱
- 中心温度が63°であれば、30分程度。
- 中心温度が65°であれば、18分程度。
- 中心温度が70°であれば、6分程度。
正しい知識を持って低温調理を楽しみましょう。
本記事での内容は特定加熱食肉製品を基準に書いているので、飲食店で提供する場合は63度以下の加熱でも可能です。
しかし、55度では流石に温度が低いので60度が限界だと思います。
殺菌効果はありませんが、液体を55度でも沸騰させる方法があります。
Vide Proと言う減圧低温調理を使えば55度でも液体を沸騰させることが出来、加熱時間を短くする事ができます。
減圧下で低温調理するとことにより、食材の気泡が開いた状態で低温加熱する事ができるので一般的な低温調理よりは調理時間を縮める事ができます。
減圧下で食材の気泡が開いた状態で加熱して終わり、通常の気圧に戻すことで加熱に利用した調味液を食材に浸透しやすくなります。
Vide Proと言う減圧低温調理にご興味がある方は下記の記事で解説していますので、ご覧ください。