フレンチの加熱調理
低温調理は焼き色をつけない調理方法ではありますが、様々な機器を用いて加熱温度を厳密に管理し、従来の調理法ではできなかった素材の風味やテクスチャーを引き出します。
肉を加熱調理すると68度でタンパク質が凝固して肉の水分が分離するので、低温調理では基本的に68度を超えないように加熱をします。
低温で加熱するので、従来の加熱方法より時間がかかります。
また、メイメード反応による風味はやテクスチャーは得られないので、必要に応じて低温調理前か、低温調理後に高温で表面に焼き色をつけることがあります。
この調理法は仔羊や鴨胸肉をロゼに仕上げるのに効果的で、微妙な温度調整を必要とする調理に多く使われています。
中心温度を55度に仕上げたい場合、55度で加熱して中心まで55度になるように調理します。
この方法であれば火を通し過ぎることもなく、余熱を考えずに狙い通りの温度に仕上げることができます。
また、加熱後すぐに切り分けても肉汁が流れ出ることがないので、休ませる必要もありません。
最近では「~度で加熱した松坂牛」など低温で加熱したという料理名も増えてきています。
低温調理を行うにはオーブンや鍋など従来の調理器具も用いますが、主に真空調理を利用することが多いです。
鴨肉の低温調理の最適温度は何度?
鴨胸肉のような赤身のお肉は、中心の温度を55〜56度に焼き上げることが一番美味しい火の通し方です。
では、低温調理では何度で何分で火を入れれば、中心温度を55〜56度に焼き上げることができるのでしょうか?
当然55度以上にはなるわけですが、60度で約30分と言うのが正解です。
約30分と幅を持たせているのはやはり様々な条件が統一されていれば正確な時間が出せるのですが、お店によってお肉の大きさや室温に戻っているのか?
同じ機械を使っているのかによって変わってきてしまいます。
ですので約30分と書かせていただきました。
しかし、設定温度が60度なので長い時間入れすぎてしまうと当然火が通りすぎてしまいパサパサになってしまうので注意が必要です。
絶対に失敗したくないと言う時は55度に設定することです。
ただし、鴨胸肉1枚でも2時間ほど時間がかかりますので4倍ほどの時間がかかってしまいます。
牛肉の低温調理の最適温度は?何度?
では、牛肉の場合はどうでしょうか?
牛肉も鴨胸肉と同じように赤身のお肉なので中心温度は55〜56度ぐらいがベストでしょう。
いわゆるミディアムレアと呼ばれるのはこの温度帯です。
牛肉を使ってステーキを焼く場合、レアやウェルダンがあるので人それぞれに好みになってしまいますが、ミディアムと呼ばれるのは60度くらいです。
中心の温度を55〜56度にしたい場合は鴨肉と同じくらいで良いでしょう。
60度で約45分くらいです。
鴨胸肉と比べると時間が少し長くなっていますがなぜかと言うと、牛肉を低温調理する場合ある程度の塊肉でするからです。
鴨胸肉は薄いですが、牛肉を低温調理するならわざわざ薄くしないからです。
真空調理
生または下ごしらえをした材料を調味料や調味液とともに専用パックに入れて真空包装し、真空調理用の湯煎機やスチームコンベクションオーブンなど、温度や時間を正確に管理できる機器を用いて加熱するのが真空調理です。
真空したパックで加熱をすると加熱温度が素材にそのまま直接伝わるので、仕上げたい温度で加熱をすれば良いのです。
加熱時間と温度を数値化することで誰にでも、同じ状態に仕上げることができるようになりました。
ですのであまり調理技術のない若い人でも、独立しやすくなりました。
真空包装した材料は、空気に触れることがないので酸化による色や味の変化が起こりにくいです。
また、調味料を一緒に真空すると素材によく浸透し、少量の調味料で全体に均一に味をつけることが可能になりました。
真空のパックごと加熱するので素材の風味や栄養価、水分などが失われにくいです。
さらに肉や魚は低温で調理することで柔らかくジューシーに仕上げることができます。
一方、材料にアクや嫌な匂いなだがついていると、そのまま残ってしまうので新鮮な材料を使うことが大事なってきます。
また、低温調理をする場合は衛生管理を徹底し、素材の種類に応じた芯温で一定の時間加熱を行わなければなりません。(芯温75度で1分間加熱したと同等以上の殺菌効果がある方法)
真空調理には2つの利用方法がありあます。
- 食材を柔らかく仕上げる
- 大量調理
食材を柔らかく仕上げる
加熱調理した材料をすぐに料理に仕上げて提供する場合は低温調理の特徴を生かし、正確な芯温管理で肉や魚を柔らかく仕上げる調理法として利用します。
大量調理
真空することで保存性が向上するので、大量調理施設では仕込んだ材料や完成した料理の保存を目的として導入しています。
真空調理で保存をする場合は、加熱時に限らす冷却や保存時の温度も厳守し、徹底的な衛生管理が必要になります。
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真空調理の歴史
真空調理は真空包装から生まれた調理方法です。
保存を目的とした真空包装の技術が開発されたのは20世紀初めのころです。
1970年代には食品を加熱加工する試みがヨーロッパやアメリカで始まり、食肉の加工にも利用されるようになりました。
この技術を革新的に応用したのがフランスの食肉加工業社ジョルジュ・プラリュという人物です。
1974年プラリュはフォアグラのテリーヌの製造に真空調理を使用し、脂肪の流出によるテリーヌの目減りを最小限に抑える方法を発見しました。
彼はその後も研究を重ね、講習会や学校の設立を通して、真空調理の普及に努めています。
1980円代半ばには、フランスの国鉄の要請を受けたジョエル・ロビュションが社内食堂のメニュー開発に協力し、真空調理法を用いた料理を提供して高評価を得ていました。
低温調理温度早見表
下記はそれぞれの食材ごとの真空調理での調理温度を表にして素早く見つけられるようにまとめています。
一般的な低温調理温度
一般的な加熱の温度による、食材の適正な温度を表示しています。
温度 | 食材 |
90度 | 野菜 |
65度 | 豚、鶏もも肉 |
62度 | タンパク質の変性が始まる温度 |
58度 | 仔牛、白身の鳥 |
56度 | 赤身の鳥、鴨やうずらなど |
55度 | 牛肉、仔羊(ロゼ) |
52度 | 魚類 |
低温調理温度と調理時間の目安 肉類
下記は主に肉類についての加熱温度と加熱時間について表示しています。
食材 | 温度 | 時間 |
サーロイン | 59,5 | 45min |
鶏モモ肉 | 65 | 1h |
鴨胸肉 | 60,5 | 25min |
鴨ももコンフィ | 82,2 | 2h |
ラムラック | 60,5 | 35min |
豚 | 82,2 | 12h |
仔豚もも、肩肉 | 80 | 8h |
仔豚ロース | 60,5 | 20min |
うずら | 64 | 1h |
うさぎロース | 64 | 12min |
鳩ムネ | 60,7 | 20min |
鳩もも | 68 | 2h |
仔牛 | 60,5 | 30min |
牛タン | 70 | 24h |
仔牛レバー | 63 | 1h |
鴨砂肝 | 82,2 | 8h |
フォアグラ | 64 | 25min |
豚尻尾 | 82,2 | 8h |
トリッパ | 82,2 | 8h |
低温調理温度と調理時間の目安 魚介類
下記は主に魚介類についての加熱時間と加熱温度を表示しています。
食材 | 温度 | 時間 |
はた、すずき | 62 | 11min |
コウイカ | 64 | 10h |
うなぎ | 59 | 10min |
オマールえ海老 | 59,5 | 15min |
あん肝 | 64 | 3h15min |
たこ | 77 | 5h |
まとう鯛 | 60 | 10min |
チョウザメ | 61 | 16min |
マグロ | 59,5 | 13min |
低温調理温度と調理時間の目安 野菜類
下記はでは野菜類の加熱時間と加熱温度について表示しています。
食材 | 温度 | 時間 |
アーティチョーク | 85 | 45~75min |
ホワイトアスパラ | 85 | 30min |
人参 | 85 | 40min |
カリフラワー | 85 | 15min |
根セロリピューレ | 85 | 1h30min |
とうもろこし | 85 | 30min |
フェンネル | 85 | 4min |
ピューレ用フェンネル | 85 | 1h |
玉ねぎ | 85 | 1h |
ペコロス | 85 | 30~40min |
ソース用玉ねぎ | 85 | 6h |
じゃがいも | 85 | 20~25min |
かぼちゃ | 85 | 5~6min |
ラディッシュ | 85 | 6min |
大根 | 85 | 30min |
リュバーブ | 61 | 15min |
かぶ | 85 | 30min |
ごぼう | 85 | 1h |
菊芋 | 85 | 1h |
ふだん草 | 85 | 75min |
低温調理温度と調理時間の目安 フルーツ類
下記は主にフルーツの加熱時間と加熱温度について表示しています。
食材 | 温度 | 時間 |
ソース用りんご | 85 | 25min |
りんご | 85 | 30min |
ピューレ用りんご | 85 | 40min |
バナナ | 85 | 10min |
ソルベ用バナナ | 85 | 45min |
コンソメ用ベリー | 65 | 45min |
洋ナシ | 83 | 25min |
ピューレ用洋ナシ | 83 | 1h |
パイナップル | 75 | 1h1h |
プラム | 75 | 20min |
ジャム用プラム | 90 |
上記にあげたのはあくまで一例です。
肉の大きさや骨の有無によって時間や温度の調節は必要になります。
ぜひ自分だけのオリジナルのテクスチャーを発見してみてください。
また、本記事で紹介した低温調理の温度の一例は真空パックによる低温加熱調理によるものです。
ところで、あなたは真空パック以外の低温調理方法を知っていますか?
その調理方法というのが減圧低温調理です。
減圧低温調理といえばガストロバックを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし現在はガストロバックよりもかなり安く減圧低温調理機を購入することが出来ます。
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